エルブルース(5642m)登山[2015年7月12日(日)〜7月23日(木)]

日程

7月12日(日)晴れ 自宅‐モスクワ

 6:50自宅発(息子に車で送ってもらう)-7:10伊丹空港8:00(JAL3002便)-9:20成田12:00(アエロフロート261便)-
 16:10モスクワ・シェレメチェボ着 ‐17:05無料シャトルバス(30分に1本)−17:15ホテル‐18:10夕食‐20:20就寝
                            パーク イン バイ ラディソン シェレメチェボ エアポートホテル泊

7月13日(月)晴れ モスクワ‐ミンボディーテレスコル村チェゲット

 4:45起床‐5:50朝食‐7:30ホテル発(シャトルバスで)−7:40シェレメチェ ボ空港9:40(アエロフロート1310便)−12:00ミン ボディ空港12:50(ガイドと 会い専用車で)−15:00昼食(途中のカフェ)−16:30テレスコルのホテル‐18:30装備チェック  ‐19:00夕食(ホテルで)‐20:00就寝 
                                           ホテル テベルダ チェゲット 泊

7月14日(火)晴れ テレスコル‐11番小屋−テレスコル 高度順応日

 5:50起床‐8:00朝食‐ホテル8:45発‐9:30アザウ駅チケット購入‐ロープウエー(2台乗り継ぎ)−9:55ミールステーション  10:00発(徒歩で)−10:45バレル小屋11:00発‐13:0011番小屋13:20−バレル小屋13:45(リフトで下る)−ロープウエー(2台乗 り継ぎ)−14:50アザウ駅−専用車でチェゲットまで帰り15:00昼食(町のレストラン)−15:40ホテル‐18:30荷物チェック(歩い てレンタル店へ)−19:30夕食‐20:00就寝                      ホテル テベルタ チェゲット泊

7月15日(水)曇りー雷雨ー晴れ テレスコル‐バレル小屋(3750m)‐4200m高度順応日

 5:45起床‐8:00朝食‐ホテル9:00発−アザウロープウエー駅で雷雨のため待機10:00発‐ロープウエー2台・リフトを乗り継ぎ ‐11:20バレル小屋着‐7番の小屋‐14:00昼食‐15:00発‐16:45 4200m地点まで高度順応17:00発−17:35バレル小屋  
 ‐19:00夕食‐20:20就寝                                      バレル小屋泊

7月16日(木)晴れ 高度順応日(パスツーコフ岩往復)

 7:30起床‐8:00朝食‐9:00小屋発‐12:30 4500m地点パスツーコフ岩下強風のため帰る‐13:45小屋‐14:30昼食‐
 19:00夕食‐20:00就寝                                       バレル小屋泊

7月17日(金)晴れ 登頂日変更 アイゼン・ピッケル訓練

 7:30起床‐8:00朝食‐9:10アイゼン・ピッケル訓練‐10:30登頂日の説明‐14:00昼食‐19:00夕食‐20:10就寝   
                                                   バレル小屋泊

7月18日(土)晴れ 登頂日

 1:30起床‐2:00朝食‐3:00発(雪上車で5000mまで登る)‐6:00サドル‐10:00頂上10:20−12:00サドル‐12:50 5000m地点 13:00(雪上車で下る)‐13:30小屋‐14:00昼食‐15:20リフト・ロープウエー16:00ホテル‐19:00夕食(町のレスで)
 −20:00就寝                                   ホテル テベルタ チェゲット泊

7月19日(日) 晴れ 周辺ハイキング

 5:00起床‐6:45散歩‐8:00朝食‐ホテル8:45発‐チェゲットリフト10:00発‐12:00昼食(町のレストラン)‐12:30車で湧水 のところへ‐歩いてホテルまで戻る‐14:00休憩14:30−歩いてチェゲット山散策‐18:00ホテル‐19:00夕食‐20:00就寝                                            ホテル テベルタ チェゲット泊

7月20日(月)晴れ ホテル‐ミンボディ空港‐モスクワ

 5:00起床‐6:30朝食−7:00ホテル発‐10:10ミンボディ空港13:00(アエロフロート1311便)‐15:20モスクワ・シェレメチェボ 空港‐16:30(アエロエクスプレスで)−17:05ベラルースカヤ駅‐(歩いて)‐17:25ホテル着‐18:30息子と合流‐地下鉄で翌日 のチケットをクールスク駅まで買いに行く20:00‐地下鉄で‐20:20カフェ・プーシキン22:00−22:30ホテル‐23:00就寝
                                          マリオット トヴェルスカヤホテル泊

7月21日(火) 曇り時々雨 モスクワからスズダリ・ウラジーミルへ観光

 6:00起床‐7:10朝食‐ホテル8:30発‐地下鉄で‐8:50クールスク駅9:30発(ニージニーノブゴロド行きの特急列車)−11:12ウ ラジミール駅12:00発‐バスで‐12:50スズダリ着‐散策‐15:00昼食‐17:00発ウラジミール行きバス‐17:45ウラジミール駅 着ーウラジミール散策・夕食‐20:14ウラジミール発‐22:00モスクワ・クールスク駅‐地下鉄で‐22:20ホテル‐23:00就寝                                           マリオット トヴェルスカヤホテル泊

7月22日(水) 晴れ モスクワ観光‐帰国

 6:00起床‐8:00朝食9:20(チェックアウト・荷物預ける)−地下鉄で‐10:00ノヴォデヴィチ修道院‐地下鉄で‐雀が丘−モスク ワ川クルーズ12:15発‐13:15クレムリンの先で下船‐歩いて‐13:40昼食(ゴドノフ)15:00−15:30ホテル‐歩いて‐
 16:00ベラルースカヤ駅アエロエクスプレス‐16:35モスクワ・シェレメチェボ空港19:00発(アエロフロート264便)−機中泊

7月23日(木) 晴れ

 10:40成田着‐バスで羽田へ移動‐(昼食)‐羽田発14:30(JAL121便)−15:30伊丹着‐16:20自宅着

出発まで

 家庭の事情で夏の山旅は前回の2012年のモンブランから御無沙汰だった。今年こそどこかへと考えていた。第一候補はトルコ・アララット山。ラマダンの時期も外れ、高さも難易度も久しぶりでも何とかなると考えたからである。しかし、年初に三男がアコンカグアに登頂したことでエルブルースが浮上。次男がモスクワに1年の予定で滞在していることも後押しした。昨年末から2回ロシアを訪問したが思いのほか印象がよく、ルーブルも安い。3月ごろに話が出て、実際に情報を収集し始めたのは4月。呑気に構えていたのだが、いつか登ろうと思っていたわけではなかったので、思いがけない落とし穴が見つかった。冬山用の装備が足りない。北緯48度と緯度が高い上、高さも5642mの雪の山。登るには二重靴が必須とのこと。三男はアコンカグア登山のために二重靴を購入していたが、私たちは持っていない。履いたこともない。急遽、山道具さんに相談し、二重靴を取り寄せ足に合わせてみる。夫はスカルパファントム6000、私はスポルティバのスパンティーク。両方をあわせてみたかったが、何しろ時期が遅くサイズがあるものを手に入れたので違うメーカーになった。履くのに時間がかかり、重く、これにアイゼンをつけて登れるかどうか不安である。
 実際に行けそうな日程は7月の海の日前後からと考えていたが、1週間早まり7月12日からとほぼ日程が決まる。今回もツアーではなく個人手配を考える。前回のロシア旅行の手配を依頼したロシア専門の旅行会社、登山ツアーを行っている会社の2社に見積もりを依頼した。4月中に頂いた見積もりが思っていたより安く、個人手配で行くことにほぼ決定。
 次は問題の体力。一年を通して山に登り、実力、体力、若さのある人なら、さほどの問題はない山かもしれないが、二人は60歳前後、最近は近所の六甲山さえなかなか登りに行けない。
 行くからには登れるだけの体力をつけなければ。まず、4月25、26日に燕岳に行くことにする。雪崩の危険がなく、アクセスがよく山小屋がきれいなことがメリットだ。当日は暑いくらいの好天で大勢の人が登っていく。ところが二重靴の試し履きに行ったのに、今年の燕岳は雪が少なく燕山荘の前はほとんど雪がない。燕山荘から燕岳までアイゼンなしで行ける。楽だと喜ぶところだが、今回はがっかり。しかも木の根がいっぱい出ている下りで靴下が下にずれてしまい、靴の内側が直接皮膚に当たってふくらはぎの内側が左右とも赤剥け状態になるというアクシデント。痛くて足を引きずりながら下るという情けないはめになってしまった。長めの靴下を購入する。
 登頂記などを読み、また手配をお願いした会社の方にも尋ねてみると、エルブルースはお金を出せば5000mまで雪上車が使え、登頂日の高低差は600m余り。天候次第だがさほど危険なことはなく、雪の上を長時間歩き続ける脚力と高度順応が決め手になるようだ。5月からの週末は脚力強化と高度順応のため可能な限り富士山に通うことにする。以下富士山の記録。

①[2015年5月2日(土)〜3日(日)] 晴れ 二重靴訓練

  2日 午後自宅発‐富士宮口5合目駐車場 車中伯 
  3日 富士宮口5:50発‐11:10浅間神社−頂上−下山‐自宅
    6合目からアイゼン装着、沢筋を雪のあるところを選びながら登る。

②[2015年5月9日(土)〜10日(日)] 晴れ 二重靴訓練

  9日 午後自宅発ー富士宮口5合目駐車場 車中泊
 10日 富士宮口5:50発‐11:00浅間神社−頂上‐下山ー自宅
    前回より少し上でアイゼン装着 前回と同じルート。

③[2015年5月16日(土)〜17日(日)] 晴れ 二重靴訓練

 16日 午後自宅発‐富士宮口5合目駐車場 車中泊
 17日 富士宮口5:50発−妻9合目で下山、夫頂上まで登り下山‐自宅
    前回より少し上でアイゼン装着 前回と同じルート

④[2015年5月29日(金)〜30日(土)] 晴れ 二重靴訓練

 29日 夕方自宅発‐富士宮口5合目駐車場 車中伯 
 30日 富士宮口5:50−10:40浅間神社‐頂上‐下山−自宅
    前回より少し上でアイゼン装着 前回と同じルート

⑤[2015年6月6日(土)〜7日(日)] 晴れ 冬用登山靴

  6日 午後自宅発‐富士宮口5合目駐車場 車中泊
  7日 富士宮口5:40発‐9:10浅間神社‐頂上‐お鉢一周‐下山‐自宅
    夏道を9合目まで登り、9合目からアイゼン装着

⑥[2015年6月19日(金)〜20日(土)] 晴れ トレッキング靴

 19日 夕方自宅発‐富士宮口5合目駐車場 車中伯 
 20日 富士宮口5:50-9:00浅間神社‐頂上‐お鉢一周‐下山
    アイゼン使用せず。夏道。

⑦[2015年6月27日(土)〜28日(日)] 晴れ トレッキング靴

 27日 午後自宅発‐富士宮口5合目駐車場 車中泊
 28日 富士宮口4:50-8:05浅間神社‐頂上‐お鉢一周‐下山
    アイゼンなし、強風で3時間以内を目指すがかなわず。

 天候に恵まれ、時間もやりくりできて7回富士山に行けた。昨年は一度も行かなかったので、1回目は戸惑ったが、2回目からは要領を思い出した。休憩は短時間で、ゆっくりでも持続して登ることを心がけた。二重靴の試し履きと脚力強化が目的だったので、富士山の常連の方に教えてもらった沢筋の雪のあるところを選びながら登った。今年は富士山も雪が少なく5月の初めですでに9合目までは夏道でアイゼンなしでも登れるほどだったので、重い二重靴にアイゼンをつけて雪の急斜面を登るのは心身ともにきつかった。力が要る上に、時間も5時間以上かかって疲労がなかなか抜けなかった。夫は二重靴にさほど問題なく慣れているようだったが、私は左右とも小指の辺りがしびれ、いろいろ紐の結び方を変えて試すのだが、特に下りではしびれることが多かった。2回目に頂上で同じ靴を履いてマッキンレーに登った人から二重靴に適した薄手の靴下があることを教えてもらい、購入した。かかとがフィットするので靴下がずれにくく少しましな気がした。ところが3回目には前夜よく眠れなかったこともあり気力がうせてしまい、登れなくはなかったのに9合目で下りてしまった。こんなことで登れるのだろうかと不安が高まっていった。
 結局言いだしっぺの三男が仕事の都合で参加できなくなったが、高い靴を買いトレーニングも始めていたため、連休明けに登山専門のAG社の手配で夫と二人で行くことに決めた。担当者が現地の山に登ったことがあるため現地の事情に精通しているようであったこと、装備なども丁寧に相談にのってくれたこと、保険が割安に思われたことなどが決め手になった。あまり登り時間が短縮されないことから弱気になりかけていたが、4回目これで二重靴は終りという頃に、ようやく靴に慣れた感じがして少し安堵した。夏道を登りだしてからは、靴も軽くなり登る時間も短縮されて疲労が軽減した。

7月12日(日) 晴れ


 伊丹‐成田‐モスクワと乗り継ぎ、夕刻モスクワ着。息子が出迎えてくれていて、一緒にホテルまで行く。宿泊予定のホテルは空港から見えるのだが、荷物が多い上、ぐるっと遠回りしなければいけないので、30分に1本の無料バスを待つ。日本は急に蒸し暑くなって半袖だったのに、ここは17℃と肌寒く長袖が基本。ホテルの前には階段があり、自分でスーツケースを運ぶとなるとつらい。もう少し何とかならないものか。夕食を一緒に食べ、息子は無料バスで空港から自宅へ帰る。ホテルはこじんまりとしているがバスタブもあり、ゆっくりお風呂に入って20:20には寝てしまう。時差6時間ということは夜中の2時過ぎ。くたびれた。

7月13日(月) 晴れ


 ホテルから無料シャトルバスで空港へ行き手続き。2時間あまりのフライトだが、途中から大きな区画の畑がパッチワークのように見える。小さなミンボディの空港で山岳ガイドのオレグと落ち合う。29歳のウクライナ人の青年。本業は医師。途中で水を買い一路テレスコルまで専用車。昼食は途中のカフェで。パスタと肉といわれたのだが、黄色いのはパスタではなく味のないトウモロコシの粉の塊のようなもの。ガイドのオレグもびっくり。おしゃれな店なのにトイレは外で、簡単な囲いの中に地面を掘っただけのものだった。

トウモロコシ畑、りんご畑、ひまわり畑(まだちらほら咲き)がどこまでも続くように見える農地、川沿いの鉱山の町を過ぎ、山岳リゾートテレスコルに到着(約3時間のドライブ)。
テレスコルのホテル。レストランなどがある小さな街から山のほうへ少し入った静かなホテル。窓が開いているのが私たちの306号室

部屋の中。こじんまりとしてきれいなのだが、シャワーを使うと排水が一方向にしか流れず洗面スペースが水浸しになるのが難点

7月14日(火) 晴れ

朝早く目覚める。窓から青空が見える。少しホテルの周囲を散歩する。空気は冷たいがいい天気。
広場からエルブルース東峰が見える

コーカサス山脈

チェゲットのリフトの近く

朝食後、車でアザウまで行き高度順応のためロープウェーでミールステーションへ。ロープウェイは9時発と聞いていたが、9時半発らしく、切符を売り始めるのも9時半から。ロープウェイの終点からゆっくりと雪のない道を歩いてバレル小屋まで行き、小屋からは雪道を11番小屋まで歩く。雪道はアイゼンなしで登る。高度順応ができているか、寒くはないか、心配だったが、天気がよく寒くない。体調もよい。後ろは11番小屋。今日はここまで。

バレル小屋からリフトで下る、登りもこれに乗りたかった。
町で遅い昼食を食べホテルへ。休憩後、明日から山小屋へ行くので登頂日の荷物チェック。足りない羽毛服、カラビナを近くの山道具店でレンタルする(二人合計で1万円弱)。大はやりである。

7月15日(水) 雷雨のち晴れ

ホテルの窓から見える空が昨日より雲が多い。
登山には不要な荷物をホテルに預け、出発するも、雲行きが怪しいと思ったら、雷と雨。ロープウェー乗り場に着くなり、猛烈な雨になった。続々人がやってくるがロープウェーも止まっているので、待機。ようやくロープウェーとリフトを乗り継ぎバレル小屋へ。
向かって左が1番。右から3番目の7番の小屋に入る。

6人部屋だが、今晩は私たちとガイドさんの3人のみ。早い者勝ちで奥の窓の前をとる。窓からエルブルースが見える絶好のポジション

14時の昼食後、4200mまで登る。今回もアイゼンなし。緩やかな登りで体調もよい。17時半ごろ小屋到着。19時の夕食まで休憩。食事棟。キッチンを仕切っているマリアンさんがおいしい食事を作ってくれる。朝食の甘いポリッジを断わったら目玉焼きを作ってくれた。

高度順応のため意識して水分を取ったら、トイレに行きたくて目が覚める。夜このトイレに行きたくなかったが、いたしかたない。

7月16日(木) 晴れ

今日は、4700mのパスツーコフ岩までの高度順応日で、順調なら翌未明に起きて登頂日になる。ただし17日は強風との予報。ゆっくり起きて朝食後、9:00に小屋出発。風が強くなかなか進まない。夜あまり寝られなかったせいもあり、お腹もすいていて快調とは言いがたい歩み。パスツーコフ岩の手前4500mで下ることにする。ガイドは天候と今日の状態を見て、登頂日は18日に決めた模様。部屋にはドイツ人夫婦(同じホテルに1日遅れで来た)とガイドが入って満室に。14:30に昼食を食べて、安心してぐっすり寝る。いつもどおり19:00の夕食後、就寝。

7月17日(金) 晴れ

4:00前にトイレに起きると、15日の夕食、16日の朝食で一緒だったドバイからのインド人二人組が出発のため宿泊棟の前にいた。空は晴れて星が見える。やや遅めの4:00出発。幸運を祈る。後で5000mまで雪上車で登った後、途中で一人の足が痛くなり引き返したとの情報。彼らは19日モスクワ発のため、これがラストチャンスだった。
 私たちは朝食後少し登ったところで1時間強アイゼンとピッケルのトレーニング。明日の登頂の説明後休憩。昼食後も休憩して、翌朝に備える。私たちはゆっくりしていたが、同室のドイツ人夫婦は4700mまで登ったとのこと。彼らは翌朝、翌々朝のどちらを登頂日にするか決めていなかったが、天気が翌朝のほうがよいとのことで、私たちと同じ翌朝に決定。晩御飯を断わって寝ている。タフである(後で聞いたらメラピークにも登ったとのこと)。
 夕食はオーストリアグループと一緒に骨付き鶏入りピラフを食べる。大鍋で炊いたものでおいしく、元気が出る。翌日は3時出発でロシアのピルグリムパーティに分乗させてもらい5000mまで雪上車で行けることになった(ガイドを除く10人となり1人100€)。

7月18日(土) 晴れ

 パン、目玉焼き、日本から持ってきたカステラを食べ出発。天気はよさそうである。暗い中を雪上車がどんどん登っていく。途中で降りた人が見える。5000m付近で雪上車を降り、歩き始める。ゴーグルが曇ってよく見えず、私は歩いているつもりだが、うろうろしていたらしく、ガイドのオレグがゴーグルを下げてくれ、ようやくまともに歩き出す(夫は今回はもうだめだと思ったらしい)。オレグを先頭に私、夫の順にトラバース気味に一歩一歩進む。さすがに息は苦しいのだが、幸い風はなく、追い抜かれたりしながらも順調に登っていく。途中でカメラを構えている人がいたが、深く考える余裕なく、下を向いて歩く。

徐々に明るくなっていき西峰が赤く染まっている。サドルまでトラバースのはずなのに、長いなあと思っていたが、ようやく6時ごろサドル到着。ここで水分補給とどら焼きなどを食べる。夫がソイジョイを差し出してくれるが、固いもの受け付けず。ストックをデポしてここからはピッケルで登る。

西峰の登り道がきれいに見える。大勢が順に登っている。写真を撮りたかったが余裕なし。ここからは急登。フィックスロープまでようやく到着。天気がよく風がないので、あまり高度感がないが、かなりの坂の上で少し休憩。2度目のフィックスロープを登る。登り終わると広々した場所にでる。もう少しと思いながらここからが長い。お腹が少し変。晴天で風がないので羽毛服を脱ぎオーバージャケットに着替える。少し休み、ゆっくり頂上を目指す。

もう登った人がうれしそうに降りてくる。ふらふらしている人もいる。もうすぐなのに時間がかかるなあと思いながら、ようやく最後の短い登り。頂上到着。

風もなくコーカサス山脈の雪をいただく険しい峰も緑の平原も360度全部見える。
 下りは楽だと思っていたのだが(もちろん登りより楽だったが)、長い。フィックスロープのところは慎重に下る。こんなところを登ったのかと思いながらサドルまでのルートを見下ろす。ようやくサドル到着。デポしていたストックを取り少し休憩。ここからは、トラバースだと気楽に考えていたが、結構きつい。ようやく5000m着。大勢が雪上車を待っている。下りとはいえもう歩きたくないのだ。

オレグが交渉してくれて、下りは一人50€で降りられることになった。ガイドを含む17名がなんとか乗り込み、小屋まで一気に1300mを下る。30分で小屋到着。下っている間も天気はよく、風もない。本当にいい日に恵まれた。
昼食は14:00〜で、もうお腹がペコペコだった。予備日を使ったので、今日中の下山をリクエストする。OKが出て、昼食後はリフト停止の16:00までに降りるべく大急ぎで荷物をまとめる。
お世話になった料理人マリアンさんとガイドのオレグと一緒に。

リフト、ロープウェーを乗り継ぎ、車でホテルまで。
今晩の夕食は街のレストランで。
シャワーを浴びゆっくり寝る。

7月19日(日) 晴れ

朝早く目が覚め、ホテルの上手を散策。昨日中に下山してよかった。

今日はリフトに乗ってチェゲットへ。

リフトを乗り継いだ先はすばらしい眺め。エルブルースをバックに。

リフトから下を眺めるとすばらしいお花畑。いったんリフトで下に降りてから、昼食。昼食後、車で10分ほどの湧水のところへ行き帰りはオレグとしゃべりながら歩いてホテルまで帰る。
もう一度、今度は歩いてチェゲットに登る。山中がお花畑で、もう一度近くで見てみたかった。




こんなきれいなところがあるとは。花の数も種類も多く、ずっといたい場所だった。白い山の向こうはジョージア(グルジア)。
ホテルの夕食時に登頂証明書をいただく。

7月20日(月) 晴れ

早朝、ホテルの周囲を散歩。新しいお客のお迎えに合わせるため、空港までの送りは7:00発になってしまった。
途中で、行きがけにはまだつぼみだったひまわり畑の写真を撮る。後ろに見えるのはエルブルース。

満開です。

早く着いたので、1本前の飛行機に乗せてもらえないかと交渉するも、きっぱり断わられる。
一週間ぶりのモスクワ到着。アエロエクスプレスでベラルースカヤ駅到着。地図を見ながら歩いてホテルまで。
次男と明日の訪問地ウラジミールへの切符を買いに、出発駅のクールスカヤ駅まで行く。
窓口はどこも行列で、しかも1人が20分ぐらいかかる。何人かで来て、各自別の行列に並び、早く進む窓口で買うのがポイントのよう。伝統の技が生きている。1時間以上かかってようやく切符が買える。みんな辛抱強い。
夕食は、昨年12月から念願のカフェプーシキンへ。お値段も高いけど、おいしくて、接客マナーが特別。

7月21日(火) 曇り

次男とホテルで朝食後、今日はウラジミールとスズダリへ行くためにクールスカヤ駅へ。切符を買ってあるので楽観していたが、乗り場がわからない。迷った挙句、ようやく見つける。改札口がなく、乗車前に切符のチェックがある。向かい合わせの4人がけの指定席に座る。ニージニー・ノヴゴロド行きでウラジミールは3つ目の駅。時速70〜80キロで快適に進む。トイレは2車両ぐらい向こうにあり、1つだけなので行列。しかも一人ひとりが長いので、辛抱強く待つ。ここでは何でも行列。意外にきれいなトイレで安心する。約1時間40分でウラジミールに到着後、先にスズダリへ行くためにバス乗り場を探すが、これがまたよくわからない。結局駅の向かいの建物の2階から出発することが判明。ここは起伏のある場所のため、バスが直接見えないのだ。このバスも指定席で、立っていくこともできる。40分ほどでスズダリのバスターミナル着。追加料金を払って中心部近くで下車。クレムリンを目指す。

カーメンカ川。生憎の曇り空。

木造建築博物館の風車

昼食はコテージが並ぶホテルの中のこのレストラン

おしゃれな内装で、しかも安くておいしい。食事中雨が降り出し、格好の雨宿りに。

ウラジミールへ戻るため、バスターミナルまで歩く。約15分。立ち席しかなかったが、途中から降りる人もあり座ることができる。ウラジミールに付く頃には晴れ始めて青空が見える。
ウスペンスキ大聖堂

黄金の門

駅近くのホテルで夕食を食べ、予約していた列車に乗車。乗り場がどのあたりかよくわからなかったが、行きと同じ車両番号だったので、大体ここら辺と決め待っていたらどんぴしゃ。列車に乗るのもスリルがあります。
帰りは地下鉄にすんなり乗り換えられホテルへ。

7月22日(水)晴れ

今日はモスクワ最終日。昨日とはうって変わっての晴天。昨日と同じように次男の来るのを待ってホテルで朝食後、チェックアウトをして荷物を預け地下鉄で観光へ。間違えて墓地のほうへ行ってしまった。
ノヴォデヴィッチ修道院


チャイコフスキーが「白鳥の湖」の構想を練った池。湖の向こうに高層ビルが見える

雀が丘にリフトで登ってから、モスクワ川クルーズという目論見は、リフトが動いていないこと(理由不明)で断念。クルーズ船乗り場へ行くも、チケット売り場はあいていないし、自分の遊覧船を勧めるおじさんに遭遇して閉口する。待つこと1時間弱。チケット売り場が開きようやく乗り降り自由の遊覧船に乗り込む。

ピョートル大帝記念碑

クレムリンが見え始める

スターリン建築(たぶん芸術家アパート)を真正面に見ながら下船

赤の広場を歩く。大勢の人。

昼食をゴドノフで食べ、ホテルに戻って荷物を受け取り、アエロエクスプレスでシェレメチェボ空港へ。切符は降りるときにも買えるようだ。

7月23日(木)

成田到着後、羽田まで行き伊丹へ。肌寒いモスクワから暑い日本へ帰ってきた。

登山を終えて

 昨年末から数えて3度目のロシア。昨年の今頃は行くことなど念頭にもなかった国へ3回も行き、登れると思っていなかったエルブルース山に登ることができた。
 エルブルースは技術的には難しくなく、長時間のアイゼン歩行と高度順応がうまくいき、天候に恵まれれば登れる山だと書いてある。しかし日頃山行も少なく、5000mを越える山は久しぶりなので、自分なりに気を入れて準備した。結果的に天候に恵まれ登れたが、強風など、天候が悪ければ私の力では登れなかったと思う。
 また、あまり事前の情報がなく、登れたからよけいに強く感じたことかもしれないが、7月のエルブルース周辺の山々のお花は種類も量も豊富で、雪をいただく雄大な景色とともに記憶に残るものとなった。行きにはつぼみだったひまわりが帰りには満開になり、好天に恵まれてひまわり畑の向こうに白いエルブルースが見えたのも感激した。
 一方、山岳ガイドのウクライナ人のオレグの話はウクライナ情勢の厳しさを感じさせられた。6月から3ヶ月間テレスコルの手前、車で15分の町に妻子と一緒にアパートを借りて山岳ガイドの仕事をしていること、医師としての給料が安く(スノーボーダーのアルバイトの時給のほうが高い)、9月にウクライナに帰ってから今後の仕事を考えることなど、日本では考えられない状況だった。
 ミンボディの空港から登山基地まで、不安と期待で緊張しながら眺めていた景色。広大な畑、ところどころ放置されたような建物のある町、自然にできたとは思えないような対岸の切り立った形の山。彼は勉強家らしく、帰りには私たちの質問に答えて、鉱山の状況などの説明をしてくれた。夏の休暇を楽しむ人たち(私たちもその一人)、圧倒的な広さの畑、日本のふじとは比べ物にならない鈴なりの小さなりんご。どこで生まれ、どこで育ち、どこで生きていくか、つい考えてしまう旅行になった。